Menu

希死意無ハウス

多分絵とかクソSSとか作る。

私達の行く先は天ではなかった。

第肆話 レンの場合・後編③

あたしたち妖精は、妖精界からなら能力持ちと妖精の行動、あとは全ての生き物の発言が分かる。
簡単に言えば、近くで見ているような感じね。
逆に、下界からは妖精の力を持ってしても能力持ちの行動と発言しか感知できない。
あたしはそれを逆手に取って、全てをロンに任せて妖精界に帰ったってワケ。
……べ、別に直視したくなくて逃げたわけじゃないのよ。
で、言われて帰って来たらこの有り様。
流石にちょっと……やりすぎじゃないかしら。
感覚器のほとんどがバラバラになっちゃってるし、肉塊と言っても差し支えないくらいに酷いことになってる。
高カーストでもここまでしないんじゃないかしら?幼馴染のこんな姿はできれば見たくなかったかも。
もっとも……ただの人間には触ることも見ることも出来ないからいいけど。
陰キャ女も帰ったみたいだしね。
それに、あたしたち妖精の体液はそれぞれの作物の果汁の味だから、飛び散ったのがかかっても別に臭くない。まぁレンの体液は酸っぱすぎて身体につけたくもないんだケド。
でもレンの肉が蠢いて、徐々に再生していくのは何度見ても気持ち悪い。
経験則からして、この分じゃ翌日の朝まではかかるかしら。
「ねぇ、親分? あたしはレンと話があるから二人にさせてくれません?」
「おう、わかった。ま、レンはしばらく喋れないだろうがな!
じゃあまた何かあればあたしを呼びなよ!」
飛び去るロン(馬鹿)を見送って、ため息をひとつ。
あ~あ。わかっちゃいたし最初からやるつもりだったけどあたしが再生手伝わなきゃダメかぁ。
あたしは酸っぱい肉塊を集め始める。そして、周りにレン以外の妖精が居ないことを確認。
……大丈夫そうかしら。
あたしは両手でハートを作ってイチゴを生成する。
「今回だけの、特別なんだからね」
そうして生まれたイチゴをレンだったものの前にお供えをした。
するとあっという間にレンは元通りになった。
この治療能力は決まった妖精にしか出来ない芸当なのだけど、なにぶん……結構めちゃくちゃかなり恥ずかしいからあんまりやりたくないし、公開したくない。
ちなみにロンすらもこの能力は知らないと思う。

「ストベちゃあん!! なんでわたしを助けたの?
バカバカ! 元はと言えばロンさんを呼んだストベちゃんが悪いんじゃない!」
「ああもう……」
助けたら助けたでこれだ。
あたしがちっちゃいだけなのだけど、あたしより少し背の高いレンはあたしをぽかぽかと叩いてくる。
絵面としては全くの逆だしレンはまるで幼児みたい。なんであたしはこんなのと仲良くしてんだろう。
「はぁ……あのね、こうやって恩売ったら人間堕ちなんかやめてくれると思ったのよ?!
あんたの為じゃないんだから! ロンを呼んだのだって全部こうやって恩を売りたかったから!
そして痛くしたら人間堕ちも踏みとどまってくれると思ったから!
……あたしだってね……レンが人間みたいに老けて死んでいくのは耐えらんないのよ!
分かってよね!」
あんたなんか大ッ嫌いよ!あたしは思いっきりレンの頬を叩いた。
あたしにはロンみたいな力はないけど、これでわかってくれるはず……だった。でも。
「分かんないよ。わたしはこんな人間さんとは違う化け物みたいな身体、要らないもん……。
人間堕ちしたって、ストベちゃんとは触れ合えるでしょ?たまに遊びに来てくれたらわたし、嬉しいよ?
ロンさんはちょっとこわいけど、人間堕ちした後も仲良くしてよ……!
ストベちゃんなら、仲良くしてくれるでしょ…?」
本当にこいつは自分勝手。もう、知らない。ホントのホントに恨んでやるんだから。
「はぁ…良いわよ、レン。もう勝手にしたら?
あんたとはこれからも"仲良く"してあげる。死なない程度にね」
あたしたちは、この日から親友じゃなくなった。


レンの場合・後編③

2020/05/11 up
2022/09/20 修正

Menu

上へ